心理士にはわからない?
- さちこ たけもと
- 1月11日
- 読了時間: 3分

とあるSNSで、ふと目についた投稿がありました。
「心理士って、あまり苦労していなさそう」 「大学院も出ていて、順風満帆なんでしょう?そんな人に、心のしんどさなんて分かるはずがない」 「この病気になったことのない人に、このつらさはわからない」
心理士がこんなことを言うのも少し変かもしれませんが、実際には、心理士を目指す時点で、かなり泥沼をくぐってきた人も多いように思います(あくまで私の観測範囲内ですが)。
自分の心と向き合わざるを得なかった経験や、簡単には言葉にできない出来事を抱えてきた人も少なくありません。ただ、それを表に出さないだけなのです。
こころのことを仕事にするためには、自分自身のこころや過去を整理できていないと、仕事の中で溺れてしまいます。そのため、多くの心理士はスーパーヴァイズや自身のカウンセリングに取り組んできています。溺れかけている支援者が、泳ぐのに疲れている人を助けようとしても共倒れになってしまいます。
「わかる!」とは言わない職種
かつて自分が体験した出来事と似た場面に直面している相談者さんを前に、内心で「わかるなぁ」と感じている心理士もいるのではないかと思います。けれど、そこは自分の体験と安易に結びつけず、「似ていると感じている自分がいるな」と気づきながら、静かに話を聴いています。「わかるわかる~!私のときはああでこうで……」とは言わない職種です。
同じ状況や疾患であっても、そこに完全な同一性はありません。
中立な立場で、「できるだけわかろう」と努めますが、「わかった」と言えるところまで100%到達することはない。
その人の体験や感情は、その人だけのものだからです。
心理士だって、もどかしい
心理士は、速攻でHPを回復させる魔法を使える存在ではありません。一瞬で人生を好転させるような力も、残念ながら持っていません。できるのは、しんどい道のりを一緒に歩くことくらいです。歩き方について専門性をもってガイドできるかもしれませんが、道のりを代わることはできません。
打つ手がなく状況が膠着したり、回復までに時間がかかったりすると、苛立ちやもどかしさを感じることもあります。それは、心理士の力不足である場合もありますし、問題そのものの難しさによる場合もあります。
心理士自身も、無力感を抱えながらその場にいます。ときに冷たく見えてしまうこともあるのかもしれませんが、実際には、わりと人間くさい揺らぎや葛藤を抱えながら仕事をしています。
あのSNSの投稿を読みながら、そんなことを思いました。
とはいえ、相性はとても大切です。カウンセラーの性別や年齢、話し方、雰囲気、相談室の居心地など。「なんとなく合う」「少し違和感がある」という感覚は、意外と正直です。遠慮せず、いろいろ出会って試してみてほしいなと思います。

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